2012 年度学校建設事業 トゥム・レーン小学校

概況

シェムリアップ州の概要

シェムリアップ州は首都プノンペンから314km北西に位置し、南部にはトンレサップ湖が広がっています。シェムリアップ州は12の郡から構成され、人口896,309人で世帯数は180,097世帯となり、1世帯当たりの世帯人員は5人でカンボジア全土の平均値4.7人を上回っています(2008年国勢調査)。なお人口の大半は昔ながらの方法で農業に従事しています。シェムリアップ州の一部の地域は、内戦が終わったとされる1979年以降から1997年まで政府軍とクメール・ルージュの間で戦闘が繰り広げられていました。村人たちは戦火を生き延びるために逃げ惑う生活を余儀なくされ、そうした中で基礎教育を受ける機会がなかったという歴史的背景を持っています。

トゥム・レーン村の概要

トゥム・レーン小学校のあるトゥム・レーン村は、シェムリアップ州プック郡レール集合村に属しています。シェムリアップ州の州都から北西に約40kmの位置にあり、1月から6月の乾季の時期には、車輌で向かうと約40分で到着します。雨季の場合、洪水により道路の状態が非常に悪くなります。トゥム・レーン村は、内戦中の1979年から1992年まで、血なまぐさい戦闘地でした。村のいくつかの土地はたくさんの地雷で埋め尽くされました。村人たちは恐怖に怯えながら安全を求めて逃げ回りました。現在では、村の人たちはお米や他の作物を作って農業で生計を立てています。村の人口は年々増えています。

トゥム・レーン小学校の概要

地域コミュニティの人々は、クメール・ルージュ政権が崩壊した後の1980年にトゥム・レーン小学校を設立しました。コミュニティの人々は、古い木造の家を取り壊し、3教室ある木造校舎を建設しました。しかし簡単な作りであったため、この木造校舎は7年しか使用できませんでした。地域コミュニティの人々は、校舎を再建するために、使い古した木や竹、建築材などを含んだ寄付を集めるチャリティーを行いました。このチャリティーにより再建された校舎は、木造で瓦の屋根でできていましたが、構造状態がかなり悪かったため、1999年に取り壊されてしまいました。2000年、3教室の校舎をアジア開発銀行の支援融資を受けて建設しました。この校舎は、レンガ造りで屋根は瓦でできています。今年度(2010~2011年度)、この学校は小学1~6年生までの6クラス運営され、313名の生徒が通っています。

トゥム・レーン小学校の抱える問題と現状

既存校舎は3教室有していますが、この教室数では、午前と午後に生徒を入れ替える2部制でも全生徒が学ぶには限界があります。
このほか生徒の一部は、校舎の脇に設けられた仮校舎で学んでいます。雨風にさらされるだけでなく構造が不十分なため、崩壊の恐れがあり危険な状態です。このような状態では、生徒の安全だけでなく、教育の質が低くなったり、中退や留年する生徒の割合が高くなる原因となる可能性があります。
トゥム・レーン小学校では、教室および教育設備の不足により、現在は就学前教育を行うことができません。したがって、3~5歳の就学前教育にあたる年齢の子どもたちは、就学前教育を受ける機会がありません。
この地域コミュニティの人々は、建物の基礎に使用する土や校舎を建築する土地を用意したり、建築中の過程をモニタリングすることはできますが、新しい校舎を建設するために巨額の資金集めをするノウハウがありません。
トゥム・レーン小学校に一番近い小学校は約5km離れたところにありますが、教室数が十分ではありません。このような状況では、生徒が森や水田を裸足で通って他の小学校に通っても、教育環境が大きく改善されることはありません。

問題解決のための建設計画

1.校舎:瓦屋根鉄筋コンクリート煉造り平屋一棟(3教室)の建設
2.教室備品の供与:児童用机・椅子、黒板、教壇教師用机・椅子
3.トイレ1棟(4室)の建設
4.井戸の設置
5.教師、生徒を対象とした「トイレ使用方法」の研修会開催
6.教師と学校支援委員会を対象に「井戸の使い方維持管理仕」研修開催
7.学校支援委員会との定期的な合、意見交換
8.教師と学校支援委員会を対象に「舎の維持管理」関する研修開催

期待される効果

学校建設終了後に期待される成果は以下の通りです

教室不足を緩和し、地域の学齢期児童への就学機会を提供する。新校舎が建設されれば既存校舎と併せて標準的な教室と設備を備えた学校となる。2部制での授業運営により1年生から6年生まで整った完全校として機能することが出来る。

適切な設計による耐久性に優れた校舎・教室の整備、教室備品や教材の提供により、教育環境が向上する。またスペース、採光性、通気性などを考慮した教室の完成により、学習環境が大幅に改善される。

トイレ、給水整備(井戸または貯水タンク)を併設することにより、公衆衛生環境を改善する。またトイレの使い方研修会により生徒や職員はトイレの使い方や必要性などについて理解を深める。

地域住民の教育への関心の向上。新校舎建築過程への参加を促すことにより、保護者や地域住民に教育の重要性、取り組み方を認識してもらい、学校建築に自ら関わることによる学校への誇りと愛着心を呼び起こし、次世代教育に対する理解を深める機会となることが期待できる。その結果子供たちを学校に入学させる保護者が増加する

事業の持続性を考え、一方的な支援ではなく住民が参加し事業内容をより深く理解すると同時に教育への意識を高める「コミュニティー参加」方式を採用しています。建設会社や日本のボランティアスタッフのみが建築作業を行うのではなく、住民も計画の作成から建設完了まで意志決定や建築作業に参加してもらいす。これにより事業実施後の自立性、主体運営、持続性の向上が期待できます。

所在地

トゥム・レーン小学校

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