ノーリア小学校 校舎建設

申請書

事業概要

カンボジア概況

東南アジアにおける最貧国の1つであるカンボジア王国は、ベトナム、ラオス、タイと国境を接しています。人口約1,300万人の80%以上は、伝統農法に基づいた農業で生計を立て暮らしています。ポル•ポト政権下にあった1975-1979年の間に、カンボジアの社会システム、教育システムは破壊され、国の社会基盤や重要な資本である人材の多くが失われました。しかし暗黒の時代の後、カンボジアは今まさに社会復興への道を歩んでいます。

2008年までの10年間に、カンボジアは年間約10%の経済成長率を遂げてきました。2010年には世界不景気の影響を受けたものの6%の水準を維持しています。また、妊産婦の保健や初等教育状況の向上に後押しされ、社会開発も進んでいます。

カンボジアの教育状況

2010年、教育省は小学校教育の向上のための優先方針として教育戦略計画(ESP) 2009-2013を提唱しました。具体的には、子ども及び青少年のための①教育への平等なアクセスの保証、②教育の質と効率性の向上、③制度開発と地方分権のための運営能力強化、を3本柱として打ち出しています。カンボジア全土を対象とした図書館システムの強化もこれらを達成するためのカギとして位置づけられています。こうした時流を受けて、小学校の教育の質向上及び図書館に焦点を当てた事業を展開していきます。

教育の質向上の必要性

カンボジアの学習カリキュラムは10年制から12年制(小学校6年間、中学校3年間、高校3年間)に伸びたものの、学習時間や教育設備の不足のため、教育の質は低い状態にあります。小学校の生徒の学習時間は平均して年間650時間以下で、75% ほどの学校が授業を午前と午後に分けて生徒を入れ替える2部制で行なっているのが現状です。上記の学習時間は、ユネスコの学習時間基準(850-1000時間)および近隣諸国と比較しても低いものです。

カンボジア教育省は、教育の質と効果の向上のため、2007年にチャイルド・フレンドリー・スクール政策を施行し、次の6分野に力を入れることを明言しています。
・ 全ての子どもたちに教育機会を保証
・ 効果的な学習
・ 子どもたちの健康、安全、保護
・ ジェンダーへの配慮
・ 家族およびコミュニティの学校運営の参加
・ 子どもに優しい学校作りのための支援
しかしながら、こうした政策にも関わらず、学校現場は教育の質の改善達成に向けて、実際問題として大きな困難に直面しています。その主な原因は、人材、教育教材、校舎、学校運営予算、図書等の不足、教員の低賃金、不十分な政府の支援などが挙げられます。

学校図書館の推進

近年、学校図書館が教育の質の向上に関わる重要な要素として広く認識され、カンボジア教育省も学校図書館の推進に力を入れてきました。その成果もあって、今ではカンボジアの小学校の約半数が図書館あるいはそれに類似する図書施設を備えるようになりました。政府の教育戦略においても、特に農村地域の小学校における学校図書館の開設を奨励しています。

教育省は、学校図書館政策の一環として、「小学校図書館スタンダードガイドライン(PSLSG)」を制度化しました。これは、長年カンボジアで図書館事業を行なってきた3つのNGO:シャンティ国際ボランティア会(SVA)、ルーム・トゥー・リード(Room to Read)、シパー(SIPAR)が教育省と協力して作成されたものです。現在、カンボジアの学校図書館はこのガイドラインに基づいて運営されることになっています。しかしながら、教員たちは今もなお限られた学校予算の中で、経済的・技術的に学校図書館を運営することが困難な状況に置かれています。

取り組む意義

教育支援の注目課題である教育の質と量の問題と内部効率との関係を考慮し、新規事業「ドリーム小学校」を行うべきであると考えています。一般的に内部効率を上げるために教育の質と量の両方に働き掛ける必要があるといわれていますが、この議論を強く後押しする成功例を未だにどの団体も提示できていません。

モデル学校として図書館サービスを伴う校舎建設を行なうのには次の2つの理由があります。
モデル学校の建設を通し、教育支援における質と量のバランスという課題をどのように解決していくのかを見せ、大きなインパクトを教育分野に及ぼすことが可能となります。

学校校舎の必要性

学校に代表される教育現場では、多くの団体による活動が行なわれていますが、中心から離れた地域では学校校舎建設の必要性がまだあります。2010年、教育省は24州の内17州において小学校校舎の状態調査を行ないました。このデータによれば、状態の良好な学校は51%(7,089校)のみで、状態不良の学校が28%(3,860校)、非常に状態の悪い学校が21%(2,827校)でした。またこの調査によれば、木造校舎は全体の18%(3,395校)、水設備のない学校が34%、トイレのない学校が22%でした。校舎の老朽化や教室不足によって子どもたちは困難な中で勉強しているのです。学校環境は子どもたちの学習や安全にも影響を及ぼすため、子どもたちが効果的に学べるような環境を整えていくことが強く望まれます。

事業目標とアウトプット
学校の選定基準

(1) 校舎が不足している、あるいは差し迫った校舎の必要がある
(2) 図書館が不足している、あるいは差し迫った図書館の必要がある
(3) 1年生から6年生までの全学年が揃っている。
(4) 事業を進め学校運営を行うための十分な数の教員が配置されている。
(5) 事業において地域社会(コミュニティ)が責任をもって下記の活動に参加することに同意している
  – 建設の基礎工事の際に必要な盛り土及び土盛り作業
  – 事業のモニタリングの実施
  – 図書館の維持管理を支えるための資金集め
(6) すでに図書館員が配置されているか、もしくは近いうちに配置予定
(7) 地域社会(コミュニティ)が、事業を支援するに当たり十分に機能しているか
(8) 州教育局及び郡教育局が本事業に賛同し支援をしている
(9) 乾季において、学校への道路状況が良い

期待される効果

(1) より多くの子どもが安全で清潔な学校環境の中で勉強することができる
(2) 図書館活動を通して、子どもたちが教育の質の重要性に触れる
(3) 対象地域のコミュニティが学校運営の維持管理ついて自分たちの役割と責任を明確に理解する

活動内容

現在のモデル小学校は、1991年から行なわれてきた小学校建設事業の経験に基づいて形成されています。このモデルの核として、以下の構成要素が挙げられます。学校校舎一式(学校校舎、学校備品、トイレ、タンクや貯水設備)、図書館一式(図書館、図書館備品、図書教材、文具、図書に関する技術)、学校環境(スクールマスタープランデザイン、校庭、植物)です。

これらの要素がきちんと機能するためには、これに関わる人々の能力が強化されなければなりません。そのために、私たちは運営方法や能力向上のための研修会を開催します。

活動の持続性及び自立発展性

この事業は、コミュニティの参加によって施行されます。この「住民参加」と呼ばれる方法は1995年から採択され、経費(約1,800~2,000USドル)、責任、時間において、住民を巻き込んで事業が進められます。しかし、カンボジア国内での開発援助の状況の変化により、2001年からこの「住民参加」の内容は縮小されました。支援団体の多くが学校建設の資金のすべてを負担するので、多くのコミュニティは自分たちがお金を出して労働者を雇うことに対して敬遠するようになりました。そして、全体の経費の15%となる2000USドルの資金集めをすることは、学校支援委員会にとって大変難しいことになりました。

対象州と村の状況
バッタンバン州

バッタンバン州はカンボジア王国の北西に位置し、プノンペン市から291km、シェムリアップ州から165kmです。州の面積は11,702 km2で、東にはトンレサップ湖、南西にはプーサット州、西はタイとの国境、北はバンテイミンチェイ州とそれぞれ境界線をもっています。バッタンバン州は13郡1市に分けられ、さらに92集合村、10自治体、そして787村があり、合計112万19人が住んでいます(2013年統計より)。バッタンバン州は、2番目に大きな地区として知られており人口は全国で4番目に多く、面積は5番目に大きい州です。また、トンレサップ生物保護地区でもあります。肥沃な大地で米作りが盛んに行われており、別名「カンボジアのライスボウル」とも呼ばれています。

バッタンバン州の経済の特徴を示した2008年統計によると、76.67%は農業、18.35%はサービス業、4.98%は工業に頼っています。

ソンカエ郡

ソンカエ郡は14郡市のうちの一つで、州の南西部に位置し、10集合村に分けられます。2008年の統計によると、郡の人口は11万1,163人で2万2,711戸でした。人口における男女比は、男性が5万4,158人で全体の48.5%を占め、女性が5万7,505人で51.5%を占めています。平均的な世帯規模は1世帯につき4.9人で、男女比は女性100人に対して男性が占める割合が94.2%となっています。

対象となる村

ノーリア小学校の対象となる村は6つあります。(下の表参照)これらは、昔からある村々です。クメール・ルージュの時代には多くの人々は政府命令に従って強制移動をさせられました。クメール・ルージュの後、村人たちは村に戻ってきたものの戦争はまだ続いており、何もないゼロからのスタートは大変困難なものでした。1980年代になると人々の生活状況は徐々に良くなり、やっと教育にも目を向けることができるようになってきました。

村民の半分は米作りなどの農業や、漁業を営んでいます。25%は政府関係の仕事、残りの25%はビジネスをしています。

ノーリア小学校の概要

ノーリア小学校はノーリア学校群の中心校であり、この学校群には4校の衛星校(ノーリア就学前教育、バラッ就学前教育、バラッ小学校、オー・ムネイ小学校)が含まれます。ノーリア小学校は地区の中心地から北へ3kmの地点にあり、どの季節でも容易に学校にアクセスすることができます。 学校がある場所はもともと墓地で、隣に寺院があります。そのため、建設途中には多くの人骨が発見されました。

校長と学校支援委員会によって作成された学校の背景が記された文書によると、ノーリア小学校は1984年に設立されました。学校と寺院が資金集めをして、木造校舎D(瓦屋根、5教室)を建設しました。しかし、状態の悪化し広さも十分でなかったため、2教室は撤去され校舎Cが建てられました。

人口の増加に伴い新たな校舎が必要になったため、学校支援委員会、寺院、アメリカの個人支援者によって木造でトタン屋根の5教室校舎Bが建設されました。

1998年には、学校の要求を受けてカンボジア政府が瓦屋根のコンクリート製5教室校舎Aを支援しました。児童数は年々増加していました。学校支援委員会は2000年に再び3教室校舎Cの建設に協力しました。2002年には、政府高官ヘン・サムリン氏がこの校舎にもう1フロアの建設を支援し、二階建て6教室の校舎になりました。

教室数が不足したため、2000年に学校は寺院から4室を借りました。ここは学校から100m離れたところにあり、現在は午前に4つの授業が行われています。もとはノーリア中学校の教室として使われていました。この建物は1950年代に建設されたもので現在の状態は非常に悪く、屋根から雨漏りがします。

現在、ノーリア小学校にある状態の悪い建物は以下の通りです。(年代順)
– 学校校舎D:約30年使用されてきたこの校舎は状態が非常に悪いです。壊れかけの柱や屋根、適切に整備されていない壁や1階部分は見るからに粗末な状態です。屋根の落下があったことも報告されています。幸いにも負傷者は出ませんでした。雨の日には濡れるのを防ぐために教員や児童らは別の安全な場所へ避難しなければなりません。この校舎はいつ崩壊してもおかしくない状態であるにも関わらず、選択の余地がないため現在も3教室で授業が行われています。

– 学校校舎B:校舎の構造は粗末です。柱は壊れかけでシロアリの被害にも遭っています。屋根にはいくつもの穴が開いており、雨の日には授業がスムーズに進みません。壊れた壁もまた、隣の教室の音がもれるため授業の邪魔になってしまいます。現在は午前と午後の両方で合わせて8クラスが運営されています。

ノーリア小学校にある状態の良い建物は以下の通りです。(年代順)

– コンクリート製学校校舎A:頑丈で安全な校舎です。3教室は4つのクラスを運営するのに使われており、1教室は事務所、1教室は研修室、もしくは壊れた机・椅子を修理する部屋として使用されています。

– 2階建てコンクリート製校舎C:頑丈で安全な校舎ですが、教室面積が6m×6mと狭いです。この広さで40人の児童が学習できるようにアレンジすることは非常に困難です。1階部分の2教室は4つの授業に、1教室は図書館として使用されています。2階部分の3教室は4つの授業で使用されています。

ノーリア小学校の課題

学校環境があまり整備されていません。教室数は不足しており、教室内や学校設備の状態も適切ではありません。そのため、子どもたちは危険な状態の教室内で勉強せざるを得ません。

モデル校となりうる可能性

ノーリア小学校は、この地域の発展において、必要な人材やものを兼ね備えた学校になる予定です。学校長の存在はこれまでに近隣学校へだけでなく、郡や州の教育局へも良い影響を及ぼしてきました。学校校舎の建設によって、校長やその他の職員による学校運営が進められれば、この学校だけでなく、村全体、さらに市や州へ良い影響を与える学校となる可能性があります。

正面左側より撮影:壊れかけの建物

古くなった校舎の前にて、校長、教員、学校支援委員会の集合写真

トイレの様子

2階建てコンクリート製校舎C: 2000年学校支援委員会と寺院によって建設

コンクリート製校舎A: 1998年政府によって建設, 現在も頑丈で安全な建物である。

寺院内の授業の様子

屋根にはいくつか壊れている箇所がある

正面左側から撮影:1950年代に寺院から4部屋を借りて使用している

教室の間の壁が不適切であり、騒音が授業の邪魔になる。教室内は暗く、子どもたちにとって魅力的でない。

トタン屋根にはたくさんの穴が開いている

正面左側から撮影:これまでに何度も修繕されてきた

木造校舎B: 1992年学校支援委員会、寺院、個人支援者によって建設

先生と子どもたちは、邪魔や危険が多い環境の中で授業を行っている。

1階部分:粗末な壁しかなく、雨の後は泥で滑りやすくなる。 机は壊れていて、高さや種類もばらばらである。

屋根のつくり:木材は腐敗しており、いくつもの大きな穴がある

所在地

ノーリア小学校

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